今回は、糖尿病治療に触れていきます。
糖尿病においては、多岐にわたる治療薬が臨床現場で使い分けされておりますが、その中でも経口血糖降下薬であるビグアナイド系薬剤について勉強録を作成します!!
ビグアナイド系薬剤の特徴と使い分け
ビグアナイドのインスリン感受性改善作用についての基礎知識
ビグアナイド系のインスリン感受性改善作用は、糖尿病治療において注目されています。この薬剤は、インスリン抵抗性を低下させることで血糖値を下げる効果があります。特にメトホルミンが有名で、さまざまな研究でその効能が報告されています。
主な作用としては、肝臓での糖の生成(糖新生)を抑えることであり、さらには筋肉や脂肪細胞でのインスリン作用を増強し糖の取り込みを促進するといった作用や、小腸での糖吸収抑制といった複数の作用により血糖降下作用を示す特徴があります。これにより、インスリン抵抗性を改善し体重の減少や合併症リスクの低下も期待できるんです!こういった特徴から、特に肥満気味の2型糖尿病患者さんにおいて第一選択となりうる薬剤です。
一方で、副作用としては下痢や消化不良が報告されており、これらは乳酸アシドーシスに起因する症状の可能性があります。乳酸アシドーシス自体は比較的稀な副作用でありますが、重篤な状態に陥ることもあるため注意が必要です。その原因としては、解糖系により産生された乳酸がビグアナイド系薬剤による糖新生の抑制により再利用できず、体内で過剰に蓄積をしてしまっていることが挙げられます。
インスリン抵抗性改善に有効なビグアナイド系薬剤の特長
ビグアナイド系薬剤は、低血糖リスクが少なく糖尿病治療に必要な体重の減少を助け、長期的な服用が可能というメリットがあります。その使いやすさから、ガイドラインでは肥満の2型糖尿病には第一選択となっているため、多くの薬局でもたくさんの処方が確認できることでしょう!
副作用は上記でも触れましたが、乳酸アシドーシスには注意が必要です。例えば、メトホルミンを服用している患者さんへは、過度な飲酒をしないように指導します。理由としては、肝臓への負担が乳酸代謝を低下させることに加え、脱水を促進することによりさらなる副作用の発生リスクの上昇に関わるからです。同じ理由で、夏の暑い時期なんかも水分補給をしっかりしてもらうように心がけていただくことが重要ですね!
まあそれでもお酒を飲みたい方が多くいるのが現実ですが、そういう方には下記を目安にしてもらえれば納得いただけるかもしれないです。添付文書上、”過度な飲酒”でなければ禁忌ではありませんので…。
※アルコール摂取量の上限 ➡ 25g/日(ビール500mlもしくは日本酒1合程度)
その他、ヨード造影剤の投与による腎機能の低下にも注意が必要です。
患者背景に応じたビグアナイド系薬剤の選択基準
次にビグアナイドの選択基準について記載させていただきます。具体的な基準はこれかなというものを箇条書きにさせていただきます。
- 食事療法や運動療法だけでは血糖コントロールが不十分な場合
- 2型糖尿病患者(特に肥満を伴うもの)
- インスリン抵抗性が亢進している
- 心血管疾患のリスクが高い患者
糖尿病治療の基本は、あくまで食事・生活習慣の是正や運動療法です。それでも血糖コントロール不良の場合は薬に頼ることとなりますが、そうした場合、ビグアナイドは最初の血糖降下薬としてハードルが低い薬剤として知られています。
また、心血管疾患との関連性も研究がされており、心不全がある患者さんへは投与禁忌でありながらも、糖尿病治療自体が心血管疾患のリスク低減に関与していることから、ビグアナイドは心血管疾患の予防として力を発揮することもあります。
糖尿病治療におけるビグアナイド系薬剤のガイドライン
日本の糖尿病学会では、古くから使われているビグアナイドの使用について明確なガイドラインが設けられています。
糖尿病治療薬の適応となった場合、eGFR 30ml/分/1.73㎡未満、もしくは75歳以上の新規患者でなければビグアナイド単剤での投与から始まります。その後は数か月かけながらSGLT2阻害剤、DPP-4阻害剤などを1剤ずつアドオンしたり、他剤への切り替えを行ったりとHbA1c等の数値を確認しながら処方を変化させていきます。
経口摂取困難な患者さん、寝たきりの患者さんへの投与は不向きである旨の記載がされており、また長期服用ではビタミンB12の欠乏による貧血や神経障害に対する言及がされています。
メトホルミンが不要となるケースとその理由
メトホルミンの投与が不要となるケースは、主に効果がない場合や副作用が出る時です。日本の糖尿病治療においてはメトホルミンが推奨されておりますが、体重の増加や腎臓機能の低下などが関係すると、別の治療薬に切り替えることがあります。
例えば、高齢者で腎機能が低下している場合、メトホルミンの使用はリスクが高まります。副作用として下痢や胃腸の不調が報告されることもあります。こういった症状が出ると、患者さんのQOLに大きな影響を与えるので、他の経口治療薬を選択することが重要になります。
選択肢として、SGLT2阻害薬が選ばれることもあります。この薬剤は、血糖値を下げる効果や体重の減少が期待され、特に肥満のある患者にとってはメリットが多いんです。メトホルミンが合わない場合、医師と相談して最適な治療法を見つけることが大切です。
最新の糖尿病薬選択ガイドラインとビグアナイド系薬剤の役割
最近の糖尿病薬選択ガイドラインでのビグアナイドの立ち位置については、現在の糖尿病治療において一つの大きな選択肢となっていることは皆さんもお分かりいただけたかと思います。
他にも、SGLT2阻害薬との併用療法も注目されています。この薬剤の組み合わせによって、より効果的な血糖値の管理が期待でき、加えて心血管イベントのリスク低減の可能性も示唆されているようです。一方で、SGLT2の利尿作用による脱水や低血糖リスク、低腎機能患者への投与など、副作用発現にはより気を使わなければいけなくなります(当然と言えば当然ですね)。近年のガイドラインでは、こうした内容に関する記述がされているので、興味のある方は復習がてら確認してみてはいかがでしょうか!
終わりに
今後の治療戦略において、ビグアナイド系薬剤は非常に注目されています。特に日本の糖尿病患者にとって、血糖値の改善やインスリン抵抗性の低下に寄与することは、合併症リスクを下げるための一助としてとても重要だと改めて感じました。
今後の治療法の一環として、ビグアナイドの役割にますます期待を寄せてしまいますね。